特集企画「サクラノートの記憶」
前回の「ありがとうライデンファイターズ」に続く特集企画です。
今回は 2009年11月5日にマーベラスエンタテイメントより発売された サクラノート~いまにつながるみらい~ の開発会社である有限会社アウディオの上田さんのご協力のもと、そのサクラノートをやりこんだ何人かのゲームショップ1983常連さんからの質問に答えていただく方式でお送りします。
サクラノートは記録には残らなかったゲームとはなってしまうかもしれませんがある特定の層には大変に記憶に残るゲームといえるのではないかと思います。
その、サクラノートの魅力を紐解いていく特集企画 「サクラノートの記憶」
それではスタートです。
Q 一見子供向けだけど内容は大人向けという毛色の変わったゲームをDSでリリースしようと考えた簡単な経緯をお聞かせ下さい。
アウディオ 上田:
大人向けを初めから意識していたのは事実ですが決して大人専用ではなく「大人から子供まで楽しめる」を目指しました。
販売戦略上のオファーで、メインターゲットは明確に絞る必要があり「それならば堂々と30~40代以上と謳ってみよう」と意気投合し決定されました。
DSで、ドット絵で、ゲームらしい画面構成なのに大人向けという面が作風でもある新しい個性と懐かしさの融合に繋がればと願いました。
Q 毛色が変わっているにも関わらず、主人公の成長といういかにもゲーム的な要素をあえて採用した意味について伺いたいです。
アウディオ 上田:
我々の解釈では、大人向け=多数のライトユーザーを意味しました。
ライト層とは言っても、過去にゼビウスやマリオ、ドラクエFFなら殆どの方がプレイしているだろう、という考えがありました。
もちろん今はお父さんお母さんになり、ゲームから離れた人も多いと思います。
ただ、DSでは非ゲーム系(シリアスゲーム)で大人世代の所持者も増えてきたのでプレイスタイルにおいて、体が覚えている操作方法や見覚えのある画面構成から「あの頃のゲーム」を感じて手に取ってもらえればという願いもありました。
一方で作品内容はゲームらしからぬテーマを持っていますので、そのギャップを楽しんで頂いて、同時に「大人が本気で遊べるソフトもあるんだよ」と 同世代・元ファミコン世代だった「ゲーム卒業組」の層に伝えられたらと思いました。
Q プレイ時間がほどよく締まっているのも、大人ゲーマーには嬉しい仕様だと思いますが、ボス戦や成長要素など、ひょっとしたら、RPG的な要素を入れたかったのではないだろうかそのあたりの迷いも感じました。
無駄な戦闘シーンが無いのですっきりと最後まで遊ぶことができましたが、とかくプレイ時間が長くなったりやりこみ要素が要求されるゲームが増えてきた中、RPG的な要素を入れようとは悩まれたんではないかと思いますがどうでしょうか?
アウディオ 上田:
プレイ時間に関しては、忙しい大人の方のライフスタイルを多分に意識しました。
総プレイ時間は開発期間などの制約もあって、もっと入れられたらと思いますがちょっと遊んですぐ閉じて、また遊んで、というサイクルは目指しました。
一気に消費してしまうのではなくて、時には通勤の間に、時には晩酌しながら
という感じで、読書のような感覚で遊んでもらえたらという気持ちで設計しました。
実は、企画立ち上げ当初は「戦わないRPG」を目指していました。
戦わない代わりに妖怪といろんな駆け引きをして勝っていく、という案でした。
当然、プロモーションにおいても「RPG」の冠が付くのと付かないのでは違いますし。
でも初心に帰ると、30~40代のライトユーザー層(ゲーム卒業組)には見た目は新しかったとしても「経験値」や「装備」といった遊びは複雑すぎるだろう、
またそういった遊びに飽きたからゲームを卒業したのでは?という考えに至りました。
結論として、懐かしいゲームスタイルという敷居の低さを纏いながら社会人、お父さんお母さんのライフスタイルの中に溶け込むゲームを目指しました。
そうして、ゲーム卒業組の世代の方が再び「ゲームのある世界」に帰ってきたら次から徐々にコアな世界に引きずり込んでしまおうと、実は企んでいるのです。
Q グラフィックは、やはりスーパーファミコンを意識しているのでしょうか。

アウディオ 上田
元々、DSはSFC+64を合わせたようなスペックになっていて2D部分は多重BG+スプライトというSFC以来の概念を引き継いでいます。
個人的な話ですが、僕は昔から「この映像が○○とは思えない」という物作りが好きで DSにおいても「DSなのにこんな映像が!」を目指している節はあります。
DSだってXBOX360やPS3と肩を並べる事が出来ると本気で思ってますので^^
そして2Dでも、まだまだ斬新なゲームの可能性は残されています。
そして出来れば消費されるゲームではなく、心に残る作品を作り続けたいと願っています。
例えばミュージシャンが楽器や機材を選ぶような感覚的な理由が大きいですがサクラノートでは作品の温かみにも繋がるとも思い、2Dスタイルを選びました。
今後はタイトルやハードによって、様々な映像音楽表現を試したいと思ってます。
Q 植松さんが携わっていることを差し引いても、サントラCDが付属していたり、ゲームのオプションとして音響設定が出来たりと、サウンド面にいろいろとこだわりを感じるのですが、音楽全般に関してこういったこだわりについてのエピソードがあれば、お聞かせしていただけると嬉しいです。
アウディオ上田:
サクラノートは原案や構想(という名の飲み会)から植松さんを中心に立ち上がりました。
ご自身が今世界に向けたいテーマやメッセージは野島さんの世界観を通じて反映されていますが音楽という形で、言葉に出来ないメッセージや願いもたくさん含まれています。
操作方法や画面形式において、あえて懐かしいゲームっぽい形式を採り入れたように「バトルはバトル曲っぽく」といった記号性も作風の一部として採り入れています。
ゲームという記号性すら、サクラノートでは作風やモチーフの一部として採り入れました。
特典でサントラCDが付いたのも、植松さんやスタッフの皆さんの惜しみないサービス精神からです。
音楽自体も、ゲームらしい曲あり、ゲームらしからぬ曲ありで水面下での新しい試みもたくさん行われました。
サクラノートというゲームを通じて、決して押し付けるようなメッセージではなく遊んで頂いた皆さんと心の温度の共有というか、何か現実生活にフィードバックされるような温かくて優しい気持ちを伝え、そして共有できたらという思いが音楽にも込められています。
音響設定は、植松さんを始めゲーム音楽ファンの1人でもある僕やプログラマの思い入れで作りました。
会社名も「audio」ですから^^
Q ズバリ同じチームによる新作はあるのでしょうか?
アウディオ 上田:
ズバリ、作りたいです!
メンバー一同作る気満々です。
今度はあの少年が成長して社会人になった頃を描いてみようかとか、
同じ世界の全く違う人にフォーカスを当てて新しい物語を作ってみようとか、
もしくは同じメンバーで全く違うゲームをとか、
妄想とビールを交えながらよく話しています。
どんな形でも、やはり伝えたいものは普遍的なメッセージですので、メンバーの皆さんも今後他のお仕事やタイトルでも同じ志でご活躍されていくと思いますがこのタイトル、このメンバーならではのプロジェクト、またやりたいですね。
あとは大人の事情が合えば、ですね^^
とにかく誰でも途中で投げずエンディングまで遊んで貰えるよう考慮していますがゲーム好きな方達にも遊んで頂きたかったので、コンプリート要素として細かな遊びこみ要素も入れ込む事になりました。
まずは少年編だけでも遊んで頂いて、エンディングを観ることでゲーム卒業組や忙しい人、また飽きっぽい人にも
「僕(私)もまだ最後までゲームできるじゃん!」と自信を持って頂いて
「ちょっと食い足りないな…」と犬猫編を遊び始めてみたり
おまけ要素を遊んで頂けたら嬉しいです。
更に言えば、それまでゲームに興味のなかった方達が他の会社のいろんなゲームにも目を向けてくれるようになったらゲーム業界の未来のためにも嬉しいなと思ったり。
そういう良いサイクルが生まれれば、いつか我々にも還元されますから^^
この度は、1983中の人いまひさんとご質問を頂いた皆様に心よりお礼申し上げます。
ご質問以外のコメントやご感想もじっくり読ませて頂きました。
サクラノートの世界観が皆様に伝わった喜びも大きいですし、ご指摘くださった不満点など反省点も多々ありますが、何よりこの作品に皆様の気持ちを向けて頂いた事にとても感謝しております。
今後のゲーム作りにおいても参考になり、大きな励みになります。
これからも皆様をもっと楽しませ、心に残るゲームを作れるようスタッフ一同頑張ってまいりますので、応援のほど宜しくお願い致します。
ありがとうございました!
アウディオ 上田
再びゲームショップ1983中の人いまひです。
そんなわけで、開発スタッフ代表コメントとしてアウディオ 上田晃さんに サクラノートファンの方々からの質問などへのメッセージを頂きました。
お忙しい中、特集企画におつきあい頂きありがとうございました。
当店の常連さんにサクラノートへのメッセージを募集した際、ここには書ききれないほどの熱い文章が届いたんですよね。
そんな、人に語りたくなる、不思議な魅力を持ったゲームだと思います。
私も、サクラノート~いまにつながるみらい~を遊んだあと、思わずアウディオさんに ファンメールを送ってしまったんですよね。
サクラの想いは僕に届きました、と。
そんなこんなで今回の特集に至ったわけですが、いいゲームです。
面白いゲームといいゲームがあるのなら、サクラノート~いまにつながるみらい~は いいゲームに属する作品です。
※ 特集記事なので1983ショッピングサイトへのリンクは外してあります。
※ 特集記事ですので、リンク大歓迎
→ゲームショップ1983 特集記事
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